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〈とりびあ〉緊急性低い患者の転院に救急車はNG 転院搬送の適正化に病院救急車の活用を

2016年05月27日更新

現在、救急出動件数の1割弱を占める転院搬送。中には、緊急に搬送する必要がなく、本来の救急業務の範囲外であるものもある。こうした医療者による救急車の不適切利用を減らすため、在宅療養患者の搬送や転院搬送に病院救急車を活用する動きが出てきている。


消防庁と厚生労働省は今年3月31日、「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」を全都道府県に通知した。これは、緊急性の低い転院搬送に救急車を利用しないように求めるもの。これまで市民による救急車の不適切要請については何度も指摘されていたが、医療者側に救急車の適正使用を求めたのは、今回が初めてだ。

この背景には、医療者による救急車の要請が適切かどうか、あまり議論されていなかったことがある。実際、在宅療養患者の状態が悪化した際に、緊急性が高くないにもかかわらず、搬送手段として救急要請したり、一度救急車で搬送して応急処置をした後、より適切な治療を行える医療機関に搬送するなどはよくあることだ。

こうした課題を含む転院搬送を目的とした救急車の出動件数は、2014年度では約50万件(8.3%)と1割弱で、救急搬送全体に影響を及ぼすほど増加している。2015年に全国消防長会が全国の消防本部を対象に実施したアンケート調査では、751本部中586本部(78.0%)が「転院搬送に関して問題がある」と回答。中では、「管轄区外への転院搬送」(358本部)、「緊急性のない転院搬送」(321本部)といった問題意識が挙げられた。このことから、全国消防長会は2015年6月、転院搬送における救急車利用の適正化を消防庁に要望していた。

実際、不要不急の転院搬送の多さを示唆するデータもある。2006年10月に「転院搬送ガイドライン」をまとめ、医療者による救急車の要請にルールを定めた横浜市では、ガイドラインの作成が検討され始めた頃から、全体の転院搬送数が減少(図1)。特に、緊急性が低いと思われる病状固定患者の搬送が著しく低減した。

図1 横浜市消防局による転院搬送数の推移(提供:横浜市消防局)

横浜市では、緊急性があると医療機関が判断した場合、まず依頼元医療機関が搬送先医療機関に受け入れ可能の有無を直接電話などで確認。その後、「転院搬送依頼書」に必要事項を記入し、消防局司令室にFAXで提出してから119番通報を行う。転院搬送依頼書に記入が求められる事項には、「『転院搬送の要件』の確認」「転院理由」「緊急性の有無」などがある。「最も効果的だったのは、依頼医療機関の代表者氏名の署名、捺印を必要としたことだ」と言う横浜市消防局。「要請の必要性が院内で吟味されるようになり、不適切な転院搬送の要請に抑止効果を発揮した」と見る。

在宅療養患者の搬送に病院救急車を共有
 転院搬送の適正化するためにはルールの作成が必要だが、搬送を必要とする患者が存在するのも事実。そのような患者の搬送に力を発揮しそうなのが、医療機関が有する病院救急車だ。

病院救急車を利用して地域の高齢者の救急搬送を支援するシステムを医師会と行政が補助金事業として既に行っている東京都では、少しずつ病院救急車の利用が増えてきている。同事業に参加するのは、葛飾区、町田市、八王子市の医師会で、地域医療再生基金を活用した補助金を東京都から年300万円ほど助成されている。

都内での病院救急車の活用は、基本的に在宅療養中の患者を対象とし、病状が悪化し緊急性は低いが搬送が必要とかかりつけ医が判断した場合、登録医療機関に患者の受け入れを要請するというもの(図2)。対象は利用登録同意書を記載済みの在宅療養患者としている。指定されているコールセンターに連絡して病院救急車の出動を要請し、病院救急車が医療機関まで患者を搬送する。民間救急車と異なり、患者の費用負担がないため、かかりつけ医も要請しやすいようだ。

図2 東京都における病院救急車を活用した患者搬送システム(取材を基に編集部にて作成)

「今年度に入り、以前よりも病院救急車の利用が増えてきている」と言う平成立石病院の岩村太郎氏。

2014年6月から、2つの医療機関が持つ病院救急車2台を活用している葛飾区では、登録患者数516人、18の登録病院で運用している。2015年の出動件数は2台合わせて108件だった。うち1台を所有する平成立石病院(東京都葛飾区)院長の岩村太郎氏は、「今年度に入ってから利用が増えてきている」と手応えを感じている。

八王子市の場合、利用できる病院救急車は南多摩病院(東京都八王子市)の1台のみ。登録患者数は610人、13の登録病院で運用している。高齢者救急の課題解決に向け、複数の施設や関係者で連携している「八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会(八高連」の土壌がある八王子市では、登録病院は急性期病院に限られず、精神科病院や慢性期病院なども含まれる。かかりつけ医の判断によっては、こうした急性期病院以外の医療機関に搬送されることもある。2014年12月から2016年3月までの出動件数は195件(22~97歳、平均77歳)だった。

「搬送先との調整をかかりつけ医が終えておくことでスムーズに搬送できる」と話す南多摩病院の益子邦洋氏。

複数の疾患を合併する高齢者を自宅や施設から搬送する際、救急車を呼んだとしても搬送先がなかなか決まらないことが多い。南多摩病院院長の益子邦洋氏は、「搬送先との調整をかかりつけ医が終えた上で病院救急車を要請するため、搬送がスムーズに進む」と話す。

八王子市がこのシステムの構築に取り組んだ目的は、救急搬送を適正化することと、高齢者を地域の中で支えることだ。搬送先を地域内の医療機関とすることで、搬送先が見つからずに高齢者が遠くの医療機関に入院するという事態も避けられるため、在宅療養患者の医療を地域内で完結させることが可能だ。

さらに八王子市では、精神科病院に入院している患者を精査加療の目的で救急病院に転院させたり、特別養護老人ホームに入所中の高齢患者を一度急性期病院に救急搬送して処置した後、慢性期病院で対応可能と判断して転院させる場合の搬送にも病院救急車を積極的に活用している。

既存の病院救急車は全国で673台、地域で活用広がるか
病院救急車の維持費は、消耗品の購入費用、人件費など年間で1000万円以上が必要。補助金があったとしても、医療機関の負担は小さくなく、こうした事業のためだけに全ての病院が救急車を保有するのは現実的には難しい。

南多摩病院の病院救急車は今回の事業のために購入したものではなく、自法人の医療機関間で患者を搬送するために保有していたもの。平成立石病院も、東日本大震災で病院救急車の有用性を実感し、事業開始前から保有していた。益子氏は、「1つの医療機関だけで病院救急車を維持するのが難しい場合は、今回のように医師会が音頭を取って地域ぐるみで活用方法を考えるのが良いのではないか。地域全体で考えれば、費用を捻出する方法はあるはずだ」と話す。

病院救急車の数は地域によって異なるが、少なくとも全国に492施設ある「地域医療支援病院」は、必置施設に「救急用又は患者輸送用自動車」があり、病院救急車を所持している。そのため、病院救急車は現在全国に673台導入されている。病院救急車が必置施設になったのは、地域ごとの効率的な医療提供体制の構築を支援するためだ。それを考えれば、病院救急車が地域における転院搬送にさらに活用されるべきだろう。