総務省消防庁は救急車に乗務する3人のうち1人について、過疎地など地域を限定して、
救急隊員以外の市町村職員らでも可能にする特例の導入を決めた。今後、教育のあり方
などを検討し、2016年度中に必要な制度改正をする。
18日に開かれる同庁の「人口減少社会における持続可能な消防体制のあり方に関する検討会」
が、報告書に導入方針を盛り込む。
消防法施行令は救急車1台に救急隊員が3人以上乗ることを義務づけている。救急救命が必要
な場合、1人が運転し、1人が人工呼吸、1人が心臓マッサージをして病院に向かう必要がある
ためだ。国家資格の救急救命士や一定時間以上の救急講習を受けた救急隊員が乗務している。
医師らが乗車する転院搬送に限り、救急隊員2人の乗務が特例で認められている。
一方、高齢化の進展で、救急車の需要は年々増えている。一昨年の全国の出動数は
約598万5千件、搬送数は約540万6千人と、いずれも過去最多を更新。病院に到着する
までの平均時間も39・4分と10年前より9・4分遅くなっている。地方では、人口集中地域
に救急隊の拠点があり、過疎地域に24時間態勢で救急隊員3人を配置することが難しく、現場
到着まで時間がかかるケースが出ている。愛媛県西予市消防本部から「地域を限定し、軽症患者に
限り、2人で救急搬送できないか」という提案が出ていた。
消防庁は3人以上の態勢は維持する一方、過疎地や山間部など救急態勢の維持が難しい地域に限り、
3人のうち1人は役場職員や消防団員などの救急隊員以外の公務員でも乗務を可能にする。主に運転を
担当することを想定している。今後、新しい職員が身につける応急手当てや教育をどうするかなどを
検討し、16年度中に関連する法令などの改正をする。