心肺停止の高齢患者、書面のDNAR提示は18% (第44回日本救急医学会総会・学術集会)
2016/11/18
2011年度からの5年間に横浜市立市民病院救命救急センターに搬送された院外心肺機能停止(CPA)
症例1783例を調べたところ、70歳以上の患者が68.0%を占め、このうちDNAR(Do not attempt
resuscitation:心肺蘇生を試みない)の意思を書面で示していたのは17.9%に過ぎないことが明らか
になった。同センター長の伊巻尚平氏らが11月17~19日に都内で開かれた第44回日本救急医学会総会
・学術集会で発表した。
対象となったCPA症例1783例を年齢別に見ると、70歳代が22.8%、80歳代が33.4%、90歳以上が
12.2%で、70歳以上の症例が68.0%を占めていた。1783例のうち、CPAに備えて事前に何らかの形で
DNARの意思を示していた症例は407例(22.8%)で、書面で意思表示がなされていたのは73例(17.9%)
だった。
DNARの意思が示されていた患者407例を年齢別に見ると、70歳代が16.6%、80歳代が29.2%、90歳以上が
50.9%と、70歳以上が86.2%と大半を占めていた。
搬送元の施設別では、高齢者施設から搬送されたCPA患者が275例(15.4%)で、このうち何らかのADL
障害を認めたのは220例(80.0%)。施設からの搬送例のうち158例(57.4%)でDNARが示されており、
これはDNARを示していたCPA患者全体の38.8%に相当する。これらの結果から伊巻氏は、「施設に入居し
ているかどうかがDNARの意思表示に関係していた可能性があるが、現実にはDNARの意思が表示されてい
ても救急搬送が行われている」と説明した。
伊巻氏は、CPA症例の約7割を70歳以上が占めていたにも関わらず、書面でDNARを表明していた割合が
2割に満たなかった点に着目し、「DNARの意思表示は書面で行うことが原則。口頭での確認では不十分だ」
と啓発。加えて、「意思表示をするだけではなく、高齢者診療に携わる医療者や患者、家族は搬送をするか
どうかも含め、事前に議論をする必要があるだろう」と指摘した。そして伊巻氏は、「救急医療に携わる
医療者だけではなく、施設、かかりつけ医、患者、患者家族を含め、社会全体として高齢患者のCPA時の
対処法を考えていかなければならない」とコメントした。