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〈とりびあ〉「救急車が買い換えられない」で思うこと

2016年10月14日更新

先日、茨城県大洗町では老朽化した救急車の買い換えを、財政難のために断念したというニュースが流れました。

 記事によれば、救急車は町に2台あるものの、そのうちの1台は15年使用しているもので、ガタがきている。そこで、2015年度に買い換える計画も出たけど、資金がなく断念したということです。また、今年ついにエンジンの不具合が出てしまい修理に出したところ、修理に13日掛かり、その間救急車は1台のみで、7件の要請が重複したため、一部は消防指揮車に医療用の資機材を積んで現場に出動したみたいです。

 この財政難という指摘について大洗町側は、「健全財政を堅持している」と反論されています(大洗町「救急車両の更新に関する報道について」)。「車両の更新をしていないことのみをもって、財政難と位置付けられるものではありません」ということらしいですが、じゃあ買い換える計画が頓挫したのは何で? 毎日新聞が誤報したということ?という疑問も浮かびます。 

 まぁ、大洗町が資金難かどうかは僕はどうでもいいのです。今回はこの件を通じて、自治体が救急体制を担い続ける上で重要になる、住民の意識について考えてみたいと思います。

 

救急車はタダ?

 よく夜間に頭痛で救急搬送されたりして、実際搬送されてみると症状が何もない人がいます。また、昼に発熱で他院を受診しているにもかかわらず、再度救急車を要請して「熱が下がらないので一応診察を」みたいなことを言う人もいます。主訴「心配」というやつですね。もちろんこの主訴は非常に大事にしなくてはなりませんし、あらぬ疾病が隠れていることもあるので、真剣に診療しなくてはならんと思っています。

 しかし、こういう人は救急車で来なくてはならないようなバイタルサインではなく、歩行も可能なことが多いです。ではなぜ救急車を要請するかというと「他の交通手段がないから」とか「タクシー呼ぶ金がなかった」とかいう声がチラホラ聞かれるわけです。

 救急車は呼べばすぐに来てくれて、救急救命処置に長けたスタッフが現場処置をしつつ適切な医療機関を選定して救命のプロに繋いでくれるすばらしいシステムです。日本なら患者さんに実費は掛かりません。ですが、多くの人が完全に忘れていることがあります。利用者からお金を取る仕組みではありませんが、運営にはお金が掛かっているのです。

 救急は地方自治体が運営資金をまかなうシステムであり、要はみんなのお金で運用しているのです。大洗町でのニュースは、その事実をまざまざと見せつけてくれました。

 

当たり前のサービスとはいえない救急車

 大洗町の財政状況の実際は詳細に知りませんが、買いたい時に救急車をポンポン買えるほど潤沢な資金繰りではないと想像されます。多分、全国の多くの自治体が大洗町と似たような状況ではないかと思います。

 呼べば来てくれるのが当たり前の救急車ですが、救急業務の実施体制が公設されていない自治体は全国で34町村あるようです。つまり、あって当たり前の救急体制は、日本の2%の自治体では当たり前の存在ではありません。ちなみに、自治体がどれだけの消防力を持つべきかということについては、消防庁から消防力の整備指針が出されています。救急車の整備についての目標はこちらです。

 

 (救急自動車)

第十三条 消防本部又は署所に配置する救急自動車の数は、人口十万以下の市町村にあってはおおむね人口二万ごとに一台を基準とし、人口十万を超える市町村にあっては五台に人口十万を超える人口についておおむね人口五万ごとに一台を加算した台数を基準として、当該市町村の昼間人口、高齢化の状況、救急業務に係る出動の状況等を勘案した数とする。

(総務省消防庁「消防力の整備指針」より抜粋)

 

 これだけの救急車があれば、平均的な救急サービスが受けられるであろうと推察されます。前述の大洗町は人口16000人ということですので、指針に沿えば目標台数は1台ということになりますが、たった数日で重複要請が何件か発生したとのことだったので、需要供給バランスは破綻しかけています。

 救急は誰かの不断の努力によって維持しているシステムであると認識する必要があると思います。努力する「誰か」とは誰かというと、地方自治体の主役はもちろん地域住民ですから、住民の努力が必要です。救急システム堅持のためには他の何かを諦めるか、税収を増やすか、なんらかの対策が必要です。もしくは救急システムを諦めるか。一人ひとりがあるべき救急サービスの姿と使いかたを考えていかねばならないわけです。

 近年、介護保険料や受けられるサービスに自治体ごとの差が浮き彫りになっておりますが、この差は救急医療サービスでもじわじわと出てくることが予想されます。自分が住んでいる町の救急サービスがどうあるべきかということを一人ひとりがしっかり考え、需要供給バランスの改善なり、町の運営なりを考えていかないといけません。「無料」だと思って何も考えずに使用していれば、いつかその体制が維持しきれなくなり、住民自身がしっぺ返しを食らう時代になっていると思います。今回のニュースは、その片鱗だと思いました。